【出張レポ】ユニオン・デ・グラン・クリュ・ド・ボルドー
今回は「ユニオン・デ・グラン・クリュ・ド・ボルドー」による試飲会の様子をレポートします。
目次
ユニオン・デ・グラン・クリュ・ド・ボルドーとは
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ユニオン・デ・グラン・クリュ・ド・ボルドー(Union des Grands Crus Bordeaux)とは、ボルドーの格付けシャトーを中心とした、優良シャトーが所属している生産者協会です。
現在は132シャトーが参加しており、毎年世界各国を飛び回り、最新ヴィンテージのボルドーワインをプロモーションし、試飲会を行っています。
数多くのシャトーが参加しているため、会場は地区別に設けられています。
試飲は3会場にて
この日訪問するメドック地区は次の3つの会場で合同試飲会が行われていました。
- マルゴー村を中心とした「シャトー・ラスコンブ」会場
- サンジュリアン村と裏街道を中心とした「シャトー・ベイシュヴェル」会場
- ポイヤック村とサンテステーフ村を中心とした「シャトー・ランシュ=バージュ」会場
1つ目の会場「シャトー・ラスコンブ」
地下蔵がないという気づき
まず、最初に訪問したラスコンブ会場で気づいたのは、夏の暑さからワインを守ってくれる地下蔵がないことです。
思い返してみれば、前日訪問したサン・テミリオンのシャトーでも、地下蔵が見当たりませんでした。
地下蔵の本来の機能は、夏の暑さからワインを守るのではなく、冬の寒さからワインを守るものなのです。
ブルゴーニュやシャンパーニュといった冬季の気温が下がる地方において、樽熟成中のワインを凍結から守るという意味合いが強かいのです。
こうした理由で、ボルドーのシャトーにおいては地下蔵を設けていないのです。
ジロンド河の氾濫原は湖沼地であり、高度の排水設備がないとブドウ畑として厳しい栽培環境のため、地理的に考えても地下蔵を作るのは難しかったのかもしれません。
年々地球温暖化の進み、激しい暑さが続く日も増えてきましたが、地下蔵を作るより、貯蔵庫に冷房をかけるという方が手間がかからないようです。
試飲会会場はシャトーの醸造所
さて、試飲会の会場は、なんとシャトーの醸造所!
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1階にはステンレス製の発酵タンクが一面に並び、収穫果の投入口があり、発酵中の作業を行う2階が試飲会場です。
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20-30軒のシャトーがそれぞれのブースで2022年のテイスティングを行っています。
朝10時とはいえ、すでに会場は人であふれています。
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どれも2022年のボトルに入っているため忘れてしまいそうになりますが、まだ熟成中のワインです。
プリムールの試飲というのは、どれも発酵こそ完了しているものの、完成前のワインです。
熟成途中のワインのため、品質を判断するのは簡単ではありません。
ただ、オスピス・ド・ボーヌのように発酵途中のワイン液を試飲し、その段階で購入するかを決めなければならないこともあるので、すでに発酵は終わり、ワインとして仕上がっている状態はありがたいものです。
加えて近年は、比較的若いうちから飲めるワインが市場から求められる傾向もあってか、かつてのボルドーワインのように頑健で長い年月の末やっとひらいてくれるようなワインではなく、プリムールであっても十分にワインとして仕上げっているので驚きです。
かつては輝かしいシャトー・マルゴーを筆頭にしつつも、玉石混交のシャトーが2-4級にひしめき合っていると揶揄されたのも今は昔、マルゴーの格付けシャトーも随分と安定感が出てきました。
印象に残ったシャトー
「プリユレ・リシーヌ」や「デスミライユ」といった格付けシャトーが印象的であった他、格付けシャトー外でも魅力的なシャトーを見つけました。
格付けシャトー外では、「ラベゴルス」というシャトーが頑張っていたのが印象的でした。
フランスで最も評価の高いワインガイド『ルヴュ・ド・ヴァン・ド・フランス』誌で星を獲得しているようです。
デイリーの村名格として買える価格帯であれば大きな魅力となるかもしれません。
2つ目の会場「シャトー・ランシュ=バージュ」
30分ほどで一通りを試飲したら、二つ目の会場「シャトー・ランシュ=バージュ」へ移動。
この会場では、ポイヤックとサンテステーフのワインを扱っています。
木製の発酵槽がお出迎え
ランシュ=バージュ会場に到着するとまずは、大きな木製発酵槽のお出迎え。
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ますますモダンな醸造環境へと変化が著しいボルドーにおいて今でも昔ながらの木製発酵槽というのは少々興味深いところではありますが、何を使うかが重要なのではありません。
いいワインを造ることこそが正義なのです。
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現代的なステンレス製発酵タンク
そんな感想を抱きつつ試飲スペースへと移動すると、もう一棟のさらに大きな醸造所が。
整然と並んだ大きな円錐台状の発酵用と思われるステンレスタンク。
現代的な建屋に真新しいステンレスタンクという組み合わせは、やはりボルドーらしさを感じます。
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醸造時期でないこともあり、醸造所はピカピカです。
この後試飲兼テイスティングランチをポンテ・カネで控えていることもあり、こちらでの試飲も20-30分。あまり余裕はありません。
試飲を重ねてわかること
試飲会のメリット
次から次へと試飲を続けるのはせわしないですが、だからこそのメリットもあります。
ワインの微妙な違いが見えてくる
慣れないプリムールの試飲ですが、試飲の数を重ねられるので、徐々に自分のなかに判断基準ができてきます。
どれも新しいワインで、タンニンが硬いものは多いですが、その中でも、樽の焼き加減の濃淡であり、果実味の凝縮度の違いであり、酸の多寡であり、香りのニュアンスであり、様々なものが微妙に違うのがわかってきます。
熟成後のスタイルを想像する楽しみ
この微妙な、けれどもはっきりとした違いを頭の中に基準点として入れていく作業が続くのですが、さらに、この後どのように仕上がり、熟成をしていくのかという想像をしなければなりません。
実際に答え合わせを始めることができるのは、これらのワインが市場に出てくる少なくとも2年以上は後になってしまいます。
午前中に試飲したのは、ACマルゴーと、ACポイヤック、ACサンテステーフでしたが、50近い試飲をすると、徐々に村ごとの差がぼんやりとイメージとしてわいてきます。
抜群の安定感のある「ランシュ=バージュ」以外にも、「バタイェ」や「クレール・ミロン」、「ダルマイヤック」あたりの印象がよく、さらには、平年だとやや凡庸な印象さえ受ける「クロワゼ・バージュ」も2022年についてはキレイにまとまっていました。
やはり、おおむね何を飲んでも美味しい、というのは良年の証左なのかもしれません。
まとめ
ユニオン・デ・グラン・クリュ・ド・ボルドーの試飲会を通じて各シャトーのワインをテイスティングしながら、そのポテンシャルの高さを実感しました。